6月20日

写真1 ( C ) NASA, ESA, CSA, STScI, G. Zullo (University of Bologna), F. R. Ferraro (University of Bologna). Image Processing: A. Pagan (STScI).
ハッブル宇宙望遠鏡とジェームズ・ウエッブ宇宙望遠鏡によって撮影された、天の川銀河のバルジにある球状星団・Terzan 5の姿。まるでスノーグローブを振ったかのように、綺麗な星が散りばめられている。また中心に青い白い星が集中し、その周りにオレンジ色の星が散りばめられている様子がわかる。
Giorgia Zullo氏(ボローニャ大学/イタリア)を中心とする研究チームは16日、球状星団・Terzan 5が2つの古い年代の異なる星々のグループで構成されるとともに、新たに最近形成された星々の2つのグループと併せて、計4つのグループからなる星団であることが判明したと発表した。ハッブル宇宙望遠鏡(以下HST)の可視光線とジェームズ・ウエッブ宇宙望遠鏡(以下JWST)の近赤外線観測によって撮影された球状星団・Terzan 5(写真1)の観測データを基に解析を行った。
球状星団・Terzan 5は、天の川銀河のバルジ(銀河中心の膨らみ部分)に存在し、いて座方向約22,000光年離れた場所に位置する。1968年に天文学者・Azop Terzan氏によって初めて発見された。極めて明るく、密度が高い。太陽質量の約200万倍の質量を持ち、直径は数十光年ある。可視光線で捉えると左半分が分厚いガスと塵で覆われている。そのため、Terzan 5が他の球状星団や巨大星雲と相互作用しているかどうかを判断することが難しく、新たな星形成を行っているかどうかを判断することが難しかった。
元々Terzan 5は異なる年齢の星々で構成された2つの年代の異なるグループからなる星団として認識されていた。この2つのグループは、数十億年前に天の川銀河のバルジにおいて合体し、今日のような姿になったと考えられている。
今回研究チームは、Terzan 5の形成過程を研究すべく、最初に、12年に渡ってHSTによって観測された星々の固有運動を用いて実際にTerzan 5に属する星々の特定を行った。これを基にTerzan 5の解析を行った結果、Terzan5の一つのグループは約38億年前、もう一つのグループは約25億年前に形成されたことが判明した。またそれぞれのグループに属す星々の金属量は異なり、年齢は約125億年、もう一つのグループは約47億年であることが判明した。このことは通常の球状星団とは異なる性質を持っていることを示しており、もはやTerzan 5が球状星団であるというよりも、別のカテゴリー「バルジの化石」として認識すべきだとしている。また2つの古いグループの星団以外にも、最近形成された2つのグループに属す新しい星々のグループが存在することも判明した。
Terzan 5の観測はVLT望遠鏡によっても観測が行われており、共同研究者でこの観測に携わったR.Michael Rich氏(カリフォルニア大学/アメリカ)は「Terzan 5に属する星々は、超新星による影響で重元素に富んでいる」とコメントしている。超新星が起きると新たな星を形成する材料を作るが、同時に余分なガスや塵が放出されていく。このことは元々Terzan 5が多くの質量を持ち、数十億年新たな星を形成し続けてきたことを示唆するとしている。
また共同研究者のFrancesco R.Ferraro氏(ボローニャ大学教授)は、「Terzan 5が天の川銀河のバルジの強大な重力環境下によって崩壊せず、自己重力によって球状を保っていることから特異な性質を持っている。そしてTerzan 5が異なる星団を集めることによって、バルジの形成に貢献してきたとも考えられる」とコメントしている。
バルジに存在する球状星団として、Terzan 5以外にもリラー1が存在し、「バルジの化石」 として認定されている。バルジには合計40~50の球状星団が存在し、研究チームはこれらが「バルジの化石」であるかを今後研究していくとしている。さらにこの研究が、銀河中心のバルジ形成がどのようにして行われてきたかを解明することにつながるとしている。