12月13日

 

 

 

写真1 ( C ) ESA/Hubble & NASA, F. Annibali, S. Hong.

ハッブル宇宙望遠鏡が撮影した矮小銀河・Mrk 178の姿。

 

 ESAは8日、ハッブル宇宙望遠鏡によって撮影された矮小銀河・Mrk 178の写真を公開した(写真1)。渦巻腕はなく、全体的に星が散りばめられ、青みがかった様子が印象的である。このように青みがかっているのは、若くて高温の巨大星が多く存在するためである。縁の部分には赤い領域が存在するが、ここには若い巨大星から放出された星風によってイオン化された水素や酸素が存在する。

 

 Mrk 178はMarkarian galaxy(マルカリアン銀河*注1)の一種であり、おおぐま座方向約1,300光年離れた場所に位置する。その大きさは天の川銀河よりも小さい。

 

 写真1を見ると全体的に青みがかっているが、これは若くて高温の星が多く存在することを示している。ちなみにこれらの星は、若干塵で覆われている。またこれらの青い星の中には、多くのウォルフ・ライエ星(*注2)が存在する。ウォルフ・ライエ星は巨大星の一種であり、そこから放出される星風によって自身の外層がはぎとられる。またこの放出された星風によって周りのガスがイオン化され、イオン化された水素や酸素が写真1中で赤い領域として表示されている。ウォルフ・ライエ星は、重力崩壊によってブラックホールや中性子星になる一歩手前の段階にある星であるが、この状態は数百万年続くと考えられており、爆発的星形成を促すと考えられている。

 

 Mrk 178においても、ウォルフ・ライエ星が爆発的星形成を促していると考えられているが、写真を見ただけではそうなっているとは断定できない。またMrk 178は伴銀河との重力相互作用によって星形成が行われている可能性がある。今後もハッブル宇宙望遠鏡のデータを解析することによって、Mrk 178における星形成の謎が解き明かされることが期待されるとしている。

 

*注1 強い紫外線連続光を出している銀河を、対物プリズム観測によって選び出したもの。紫外線の源は、活動銀河核からのものと、スターバースト(爆発的星形成)からのものとがある。アルメニアの天文学者マルカリアン(B. Markarian)が1960年代にビュラカン天文台のシュミット望遠鏡によるサーベイ観測でこの種の銀河を最初に発見した。

 

*注2 高温で高光度の恒星、HR図上でもっとも左上の領域を占める。1867年にウォルフ(C.J.E. Wolf)とライエ(G. Rayet)によって幅の広い輝線だらけのスペクトルを示す奇妙な星として発見された。大質量星のなかでも特に質量の大きなものが進化し、水素の豊富な外層を失った段階に相当すると考えられており、実際に特異な元素組成を示す。WN、WC、WO型に細分類され、WN型はヘリウムと窒素の輝線が強く、WC型はヘリウムと炭素の輝線が強い。ウォルフ・ライエ星は進化の最後に重力崩壊するが、WN型、WC型となっているヘリウム星が超新星爆発を引き起こすとⅠb型超新星、ヘリウム層の大部分を失ったWO型が爆発すると、Ⅰc型超新星になると予想される。約60%が連星系に属し、ウォルフ・ライエ星からの星風と伴星のO型星の星風の衝突によるとみられるX線の放射が顕著なものもある。