11月1日

 

 

 

写真1 ( C ) ESA/Webb, NASA & CSA, J. H. Kastner (Rochester Institute of Technology).

JWSTが捉えた惑星状星雲・NGC 6537の姿。

 

 ESAは28日、ジェームズ・ウエッブ宇宙望遠鏡(以下JWST)によって捉えられた惑星状星雲・NGC 6537の写真を公開した(写真1)。星雲真ん中にある星が明るく輝き、この星が周りの塵を照らし、赤く写し出されている。赤い蜘蛛のように見えることから「赤蜘蛛星雲」とも言われる。また真ん中の領域から双方向にループ状のガスが噴き出しており、青く写し出されている。惑星状星雲の背景にはたくさんの星が写し出されており、全体として華やかに見えるのが印象的である。

 

 NGC 6537は、いて座方向約3,000光年離れた場所に位置する。かつてハッブル宇宙望遠鏡の可視光線観測も行われたが、その際には中心部分の光はかすかなものであった。

 

 赤蜘蛛星雲・NGC 6537のような惑星状星雲は、太陽のような星がその生涯を終える際に形成される。生涯を終える際には膨張し、赤色巨星となり、外層部分を脱ぎ捨て宇宙空間に放出する。外層を脱ぎ捨てると星の中心核部分があらわとなり、そこから放出される紫外線によって周りの物質をイオン化し、明るく輝かせる。この状態はおよそ数万年続くと考えられている。なお名前に「惑星」という文字が含まれるが、惑星とは一切関係がない。

 

 今回のJWSTによって撮影されたNGC 6537の写真1を見ると、中心にある星の姿が明るく輝いている様子がわかるが、実は連星系を成しており、このことで全体的に砂時計もしくは蝶々のような形をしている。中心部分から双方向に広がる青い領域には、水素分子ガスが広がっており、それぞれの方向に3光年ほどの長さに渡る。この青い領域は数千年かけて広がっていくと考えられている。

 

 また写真1の中心部分をよく見ると、真ん中に紫色のS字を確認できる。これはイオン化された鉄原子が存在することを示している。このことは惑星状星雲中心から素早く動くジェットが噴出され、過去に放出された物質と衝突していることを示しており、周りにある青色をしたガスのさざ波構造をもたらす。