8月17日

 

 

 

画像1 ( C ) NASA, ESA, R. Crawford (STScI).

白色矮星(画像右上)が赤色巨星に衝突してガスや塵などの物質を吸収する様子のイメージ図。白色矮星が赤色巨星の大気中を通過することでオレンジ色の衝撃波が形成される。

 

 Boris Gaensicke氏(ウォーリック大学・イギリス)を中心とする研究グループは13日、WD 0525+526と名付けられた巨大質量白色矮星をハッブル宇宙望遠鏡(以下HST)に搭載された紫外線観測装置によって観測した結果、大質量に至る要因が、白色矮星自身の進化によるものではなく、他の星との合併によって成長したことにあることを見出したと発表した。今回の研究成果は白色矮星連星系や超新星の謎を解き明かすうえで重要なものであるとしている。

 

 白色矮星は、自己重力によって潰れて超新星を起こすほどの質量を持たない星が、生涯を終えた際に残るものである。白色矮星に至る過程では、星の中心部から水素が放出される。また星の外層部分を排出していく。白色矮星の中心部は、その原始星の質量に応じて、炭素-酸素、もしくは酸素-ネオンで構成される。ちなみに太陽は次の50億年で白色矮星になると考えられている。

 

 白色矮星は理論的に太陽の1.4倍の質量まで増えることが可能であると考えられているが、太陽質量以上の質量になるのは稀なことである。そのため太陽質量以上の質量を持つ白色矮星は、巨大質量白色矮星という名前がつけられている。巨大質量白色矮星はこれまで単一の大質量星が進化してできた、もしくは白色矮星が他の星と合併することによってできたものであるかのどちらかであると考えられていた。

 

今回観測対象となったWD 0525+526・白色矮星は地球から約128光年離れた場所にあり、太陽質量の1.2倍であると考えられている。過去にはこの星以外にHSTの可視光観測によって、6個の星同士の衝突によってできた白色矮星が発見されている。また2019年に人工衛星・Gaiaによって星の質量や年齢から推定される青色よりもより青色の7個の星が観測されており(推定よりも質量が大きいことを意味する)、なぜこのような現象が起きているのかが謎であるとされていた。

 

 研究グループは巨大質量白色矮星の特徴を探るべく、HSTに搭載された紫外線観測装置を用いてWD 0525+526を観測した。その結果、白色矮星の大気中における炭素-酸素量もしくは酸素-ネオン量が通常の白色矮星よりも多いことが明らかになった。通常であれば水素やヘリウムが多いが、このことはこの白色矮星が通常とは異なる環境にあったことを意味するとしている。そしてその要因は、この白色矮星が別の白色矮星と衝突したか、もしくは巨大星と衝突したことであると考えられている。白色矮星が別の星と衝突すると大気中の水素やヘリウムが燃えて、これらの元素が乏しい外層が出来上がり、中心部から炭素が外側に飛び出していくがために、炭素が検出されるのである。すなわち今回の観測結果は、WD 0525+526が別の星と衝突してできた巨大質量白色矮星であることを示唆している。

 

 またWD 0525+526は表面温度が21,000K、質量が太陽質量の1.2倍であり、大質量白色矮星の中でも高い温度、質量を持つことが判明した。通常は対流運動によって炭素化合物と大気にある水素-ヘリウムが混ざることによって温度が下がるが、WD 0525+526は準対流現象であまり炭素化合物が大気中に上がってこないことが要因であるとしている。

 

 共同研究者であるAntoine Bedrad氏(ウォーリック大学)は、「今回の観測のように白色矮星の大気中の炭素量を観測することによって、一般的に白色矮星にどのくらい炭素量が存在するのかを調べたり、合併によってできた白色矮星がどのくらい存在するのかを研究していきたい。このことが白色矮星の連星系や超新星の理解につながる」とコメントしている。