5月10日

 

 

 

写真1 ( C ) ESA/Hubble & NASA, D. Thilker.

ハッブル宇宙望遠鏡が捉えた渦巻銀河・NGC 3596の姿。

 

 ESAは5日、ハッブル宇宙望遠鏡の6つの異なる波長帯によって捉えられた渦巻銀河・NGC 3596の写真を公開した(写真1)。フェイスオンに写った綺麗な渦巻銀河の形が印象的であり、全体的に楕円構造をしており、中心は白く、その周りは金色に輝いている。また中心部分から2本の渦巻腕が外側に伸びている。

 

 NGC 3596は、しし座方向およそ9,000万光年離れた場所に位置する。1784年にウィリアム・ハーシェルによって発見された。ちなみにウィリアム・ハーシェルは、ESAのハーシェル宇宙望遠鏡の名前の由来にもなっている。

 

 NGC 3596の写真1を見ると、銀河の見え方が完璧に近いフェイスオンとなっており、しっかりとした渦巻腕が見える。渦巻腕が光輝いて見えるのは、星やガス、塵が密集していることを示している。赤色のひも状のものは塵を表し、ピンク色の斑点状に見える部分は、星形成が活発に行われている領域を示しており、青く光る星は若い星である。渦巻腕のほとんどの部分において、星形成活動が活発に行われている様子がわかる。

 

 銀河の渦巻腕がどのようにして形成されるのかは、とても難しい問題であり、未解決である。銀河には様々な種類があり、きれいな渦巻腕を持っているものもあれば、不完全なもの、羽のような渦巻腕を持つ銀河などが存在する。また中心部分に棒状構造を持つ棒渦巻銀河などもある。さらに2つの銀河が合体していたり、単独の1つの銀河として存在するなど銀河の種類は多種多様である。渦巻腕がどのようにして形成されたかについての最初のアイデアは、winding problemとして発表されたものである。もし銀河の渦巻腕が完璧に他の物質と干渉しない構造であれば、銀河が回転すればするほど、渦巻腕の巻きがきつくなり、渦巻腕として観測されないようになってしまう。そのため現在ではこの渦巻腕が物理的な構造であるというより、密度の高いところと低い場所が存在するがゆえにできる構造であると考えられている。星やガス、塵が銀河円盤の中を軌道運動する際に、渦巻腕の中に入ったり、外側に出ていく動きが関係していると考えられている。これはまるで交通渋滞に巻き込まれた車のように、星やガス、塵などが渦巻腕に入ったとたんに動きが遅くなり、集団として集まるようなものである。